No.01 1日中



 それが始まるのは決まってあの「パチっ」という音が冷蔵庫から聞こえる時でした。

どちらかというと「ふと聞いてしまう」というのにも近く、とにかくそのパチっという音はシグナルとなって私に信号を送るのです。

それはベッドにたどり着くことなくソファーで寝落ちした早朝のふとした覚醒の瞬間

何かに集中してふと我に返った時の一瞬

話が弾み過ぎたせいで話し声がますます大きくなっている時、ひょんなタイミングで気づくあの僅かなラップ音のありか。


気づけばその気配と私は毎日戦っている。(もうダメだ、無理)と、何度もそう思っている。


行きつけだった店の店員がまるで人間の口真似をする無気力なおうむのような風貌でしつこく何かを探っている時も私は頭の片隅でこの音について考えている。

(ああやっぱりもうダメだ‼︎)と再び嘆息する頃は夜がすっかり明けていて、それでも私の口は渇いたままそれに対するありとあらゆる言葉を探しているのです。何度も水を口に含みながら人気のない部屋の片隅で、私はぶつぶつと独り言を言いながら朝をむかえ、力尽きて二度寝をし、起き出すとまだあの音は鳴っている。


たぶん頭の中で?いやいや事実その音は鳴っているにも関わらず

私は結局これを頭の中の出来事にしようとしています。


その現象について「決して終わることのない物語」と表現したところで私のこの感情に着地点はないのは確か。

ちょうどそれは数年前にYOUTUBEで見返していた(恐らく違法アップロードの)アニメ「少女椿」のラストシーンにも似て、何度も何度も繰り返し止まないくしゃみのような。果てしなく続く残像のような、いつまでも追いかけてくる定期信号。音でありながら気配であり。

私はその音を結局自ら探しに行ってしまうのでした。



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